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『生き延びる都市 新宿歌舞伎町の社会学』新曜社(2017/3/3 定価4400円)武岡 暢 著


『生き延びる都市 新宿歌舞伎町の社会学』新曜社(2017/3/3 定価4400円)武岡 暢 著

今となっては社会学博士となった武岡君の、2008年以来、実質5年以上に及ぶ、繁華街、とりわけ歌舞伎町研究のある意味での「集大成」ということなのでしょう。ページを開くと、まず目に飛び込む「父、善彦に」、最近急逝された父に捧ぐは、彼のこの著作に対する想いの深さを物語ります。
とはいえ、336頁、4,400円。かなり立派な装丁。まだ読んでません。読み切るのはちょっとしんどそう。ただまあ、何を書いたのか、だいたいわかる(気がします)。そして、学術的資料としての価値は十分にある。そこで、この学術的書籍にありがちな「難解さ」を、多少なりともわかりやすくするためのヒントにもなるよう、せっかく著者より献本いただいたので、紹介。

◆地域社会研究の刷新された戦略で迫る"歌舞伎町"の構造
数千軒の風俗店、スナック等を擁する世界有数の歓楽街はいかにして存続してきたのか。住民やコミュニティに軸足を置く従来の手法を離れ、「場」としての空間の作用、「移動」する主体、その場での「活動」に焦点を合わせ、その再生産メカニズムを描く。(新曜社)

(著者紹介)武岡 暢
1984年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。現在、首都大学東京都市環境科学研究所都市システム科学域特任助教、ならびに大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員。専門分野は歓楽街の社会学。

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歌舞伎町。和気あいあい、がこれほど似合わない「街」はない。大小のコミュニティや組織の中では程々にそうなのかもしれないが、それらが散在する全体を一つに、こうだと言葉で表すような街ではない。もし、一番近い言葉で言うなら、歌舞伎町は、「生き物」なのです。そして、生き物の「本能」として、生き抜こうとする。

その生命力の源は何かと言えば「拮抗」だろう。大小のコミュニティ、組織、個々人が、それぞれの立ち位置、利害、欲望と、少しの思想が、決して融合することなく(その必要もない)、多彩で多層なベクトルとなって、その結果が街の進む(生きる)道を揺らぎながら定めている。
「大人の話し合い」では決まらない。生存をかけた「勝負」に近い。彼の本には、ここはおそらく触れていないだろうが、歌舞伎町の新参者は、必ず、そのベクトルの中から一番"強そう"に見えたものに近づき、味方につけようとする。これは「常」であり、人間らしくもあり、そして、多くの「新参者」が犯しやすい最初の間違いでもある。なぜかと言うと、ベクトルは右と左、上と下のような単純な存在ではない。二次元的思考では見えないのだろうが、この街のアクターは多彩だ。そして、多層でもある。今後歌舞伎町に投資しようと考えている企業や取材するメディアにも言えるが、とくにそこを意識したほうがいい、というか、怪我をしないで済むと思う。武岡君の新著のタイトルにある「生き延びる」というワードは、彼がたどり着いた繁華街の本質を、最もシンプルに表している、非常にいいタイトルだ。

本の紹介の本筋からそれたが、表に見える(可視化)現象には、必ず、その現象(活動)に参加していないものが存在している。そこに一番の興味を持っていたのが、2008年、初めて自分の元に訪れた当時の武岡君。そのことが、やがて自分の歌舞伎町での「在り方」にも小さくない影響を与えた気がする。

あれから9年。ふと、彼からもらった最初のメールを読み返したくなったので、ついでに紹介(一部省略)

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2008/01/11 (金), 3:57
てらたにこういち様

はじめまして. 私,東京大学大学院人文社会系研究科で社会学を専攻しております,武岡暢(とおる)と申します.専門は都市社会学です.今回このようにメールを差し上げましたのは,私の行う社会調査へのご協力をてらたに様にお願いするためです.

私が行いたいと考えている調査は,「歌舞伎町ルネッサンスに見る都市形成」に関する調査です.
歌舞伎町ルネッサンスという取り組み(と仮に呼んでおきます)において,どのような諸アクターのどのような意図が,どのような諸実践によってどのように実現されているのか,を調査したいのです.同時に,どのようなアクターがそれに参加しなかったのか,についても興味を持っています.都市,特に歌舞伎町などの盛り場は,非常に目立つ存在でありながら,しかし一方で,どのような社会構造を持っているのかが非常に見えにくい場でもあります.そのような場の構造を,今回の調査によって明らかに出来ればと考えています.

特に歌舞伎町ルネッサンスは,地元町会(歌舞伎町商店街振興組合)や地権者,行政では区から都,国のレベルまで,様々なアクターが関与しており,外部からはなかなか見えにくい存在であるのと同時に,非常に興味深い先進事例にもなっていると思います.
そこで,私の調査では,歌舞伎町ルネッサンスにまつわるあらゆることを,つぶさに観察し,書きとめ,聞き取りを行って調査したいと考えています.歌舞伎町ルネッサンスによって何が実践されているか,を総合的に知りたいのです.私が仮説として考えているのは以下のようなことです.

「都市行政においては,行政文書等のレベルと,各種実践のレベルとのあいだに,常に差(開き)があり,その乖離こそが都市の形成に大きな影響を与える.」
この仮説を,今回の調査によって実証または反証したいと考えています.当初はこの調査は行政を中心に行おうと考えていましたが,行政は自らの実践をなかなか外部に公表しようとしません.法令や議事録,行政文書などから明らかになることは非常に限定されています.しかし,てらたにさんの「歌舞伎町るねっさんすBlog」を拝見しまして,あらゆる実践についての情報をお持ちであることに,本当に驚嘆しました.
そこで,ご協力をお願いしたい調査の内容なのですが,歌舞伎町ルネッサンスにまつわる会議やイベント,取締りやキャンペーンなどを,実地に拝見させていただきたいのです.調査に伺うのは私,武岡の一名のみです.

武岡 暢
東京大学大学院人文社会系研究科
社会文化研究専攻(社会学)
修士課程
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このメールをもらった当時、武岡はまだ24だったが、もう33かあ。一つ彼の紹介に加えたいのが、中高は武蔵(私立)だということ。だいぶ離れてますが、なんと偶然、後輩なのです。感慨深い!
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